テクノロジカルな女子高生
仮想現実空間の中で少女は探し求めていた。人類の電脳社会化が進んだ結果生まれた
「現実世界と超現実世界との狭間」
を。
少女の趣味はパソコン、もっというとハッキング、クラッキング。最近聞いたネットの噂。入ったら帰ってこれなくなる裏のサービスがあるらしい。 神々しく心地よくVRゴーグルをつけたまま失禁し餓死するものまでいるらしい。
神々しいというところが気に入った。少女は裏のサービスを探している。あやしいexeファイルも片っ端から実行した。 そのうちの一つが、当たりだった。
「ようこそ!あなたは4人目のお客様です!」
クリックしていくと性別を聞かれたので女性を選択。
「あれー?女性なのー?ビデオつけてみてー」
すこし躊躇ったがパソコンのビデオをつける。
「本当に女の子だー。凄いねー。今まで来た3人は全員男で俺の作ったバーチャル桃源郷から抜け出せなくしたけど、さて女性ならどうしよう」
少女は言った。
「貴方は何が目的なの?」
管理人は応える。
「人を幸せにするウィルスをばら撒きたいんだよー。」
管理人は続けた。
「ふむふむ君は孤児として育ったのか。ではこれをあげよう。日本中の人間の現住所と戸籍とやらを紐づけたデータだよ。両親に会うも良し、会わずとも良し。」
そこで通信は途切れた。そのかわりにデスクトップ上に
「電子の絆」
というアプリケーションがインストールされていた。 少女は正直吐きそうなほど動揺していた。私が孤児ってわかったの?あの管理人は日本中の人間の個人情報を握っているの?
メイクをして気合を入れたら少し落ち着いた。孤児同士だった幼馴染のケンに電話する。
「もしもーし、ケン、聞いて、例の裏のアプリみつけた。色々あってあたし達の両親にあえるかもしれない。」
ケンは動揺している。
「え?俺らの親って交通事故で死んだんだろ?っていうかそんな危ないことまだやってたのか!」
少女は言う
「あの人は日本中の人間の個人情報持ってるのよ。その上で両親に会ってもいい、って言ったのよ。これってアタシ達の親、生きてるってことじゃない?」
少女は自分の名前を入力する
「桂 杏梨」
ケンもアンリの家に駆けつけていた。
「桂 杏梨、Y県の桂家の10人目の子供として生まれ両親に施設に預けられる。」
「なんてこった。」
ケンが口を開いた。
「事故で死んだってのは嘘で産むだけ産んで捨てられてたのか。」
「こんどはケンね。」
アンリがケンの情報を入力する。
「横山 健、Y県の横山家の長男として生まれるが直後に両親が交通事故で死亡、施設に預けられる。」
「なるほどね。」
ケンがつぶやいた。
「俺は真っ当な孤児だったって訳か。まあいいけどね。それより、どうするアンリ、親に会うのか?」
「殺しちゃおっか?いっそ。」
アンリの瞳にはジョークではないという強い意志が感じられた。
「殺したらお前が殺人犯になるんだぞ!だめだよ!」
「じゃあツラだけでも拝みたいわ、今から行きましょう。」
アンリは偽造運転免許を手際良く作り出した。
「ほんと、お前のそういう危ない才能、まともに使えばどこの大学でも行けるんじゃねえの?」
ケンは最近覚えたタバコをふかした。
道交法や運転方法はマスターできていたのでドライブは順調だ。レンタカー代が痛かった。