パーティー
「天下取ったー!」
リサは自宅でアンリとケンと一緒に宅配ピザを貪り食っている。
「うおおお!ビール美味い!おい!アンリは飲むな!まだ未成年だろ!」
Lサイズのピザを3枚頼んだ時はアンリもケンも驚いたが、もっと驚いたことにもうすぐ食べ切りそうだ。
「お姉ちゃんピザとかビールとかそんなに食べたかったの?」
「うん!アタシ70kg級で戦う為に60kgくらいまで増量してたんだよ。今回のオリンピックのために48kgまで減らしたの。ジャンクフードが食いたくて食いたくて。もう食っていいんでしょ?いやあマスコミになんて言うか考えないとな。」
「なるほどね。」
アンリが言う。
「お姉ちゃんはビッグマウスな上に節制もできないというわけね。」
「何言ってんだ。試合には間に合ったぞ?」
「いいのよ、普段は自堕落で試合の時だけ節制する方が人間味がある。」
アンリは理科1類、ケンは文科1類に合格した。リサもアンリ達と一緒に合格発表に来ていたが、サングラスをしていたのにすぐにバレ、揉みくちゃにされた。
「どうしてここにリサ選手がいるの?」
「いや、ほら、あの、アタシ中卒だからさ、東大の合格発表ってもんを見てみたかったんだよ。ほら、マスコミも来てるし。」
「リサ選手も大学受験するんですか?」
「いえ、しません。」
そう言うとリサは一人で車で帰ってしまった。
アンリは言った。
「受験勉強も終わったし、お姉ちゃんもオリンピック優勝したし、いよいよね。」
ケンが言う。
「何が?」
「決まってるじゃない!日本を支配するのよ!」
「え?」
「お姉ちゃんには日本の支配者になっていただきましょう。」
「お姉ちゃん車で帰っちゃったからアタシ達電車だったんだからね。」
「ごめんごめん、顔がバレちゃったからさ。でもさ、2年前の頃と比べて随分知名度上がったな、アタシも。」
「そりゃそうよ、オリンピック2種目金メダルだもんね。国民栄誉賞ものよ。」
「国民栄誉賞か。考えたこともなかったな。そっかー、大多数の人にとってオリンピックだけがスポーツなんだな。アタシが間違ってたわ。オリンピックよりもその前の70kg級の格闘技の方がしんどかった。」
「お姉ちゃんは中卒だから立身出世の方法はわからなくて当然よ。」
リサはアンリの背後に回って両腕でアンリの顔を覆い、手首の骨で思いっきりアンリの頬骨を締め上げた。
「んん~~~~~!!!!!!」
「アンリ〜、痛いだろう。この技は骨折したりとかの危険性はないが痛さではトップクラスだからなー。」
ケンが仲裁にはいる。
「あの、リサさん、今のはアンリが悪かったけど金メダリストが素人をいじめちゃまずいのでは?」
「大丈夫、ケンくん、これは姉妹喧嘩よ。あとね、スポーツにはオリンピック以外にも色々と、こういう恐ろしい技もあるんだってことを体で覚えてもらおうと思ってね。」
「なるほど、それもそうか」
「んん~~~~~~~~~!!!!!」
アンリは助けて離してと言おうとしていたがあまりの激痛に声が出なかった。
「…で。」
アンリは頬を氷で冷やしながら言った。
「おねえちゃん選挙に出てよ。」
「選挙?」
「出てくれなきゃ一般人に暴行したって週刊誌に言う。」
「ふざけんなよ。凄い手加減したし、あれは躾けだ。アタシが本気で締め上げたら頬骨陥没してるぞ。」
「このゴリラ女。」
「そのゴリラ女が選挙にでたらまずいだろ。」
インターホンが鳴った。
「誰だろう?」
モニターには黒い帽子にサングラス、黒いスーツ、黒ずくめの男が立っていた。
「誰だ?こいつ。」
「あー!知ってるわー。パパの元仕事仲間よ。あいててて。喋ると骨が痛い。」
マイク越しに男は言った。
「早乙女梨沙、仕事の依頼をしにきた。」
アンリが答えた。
「お久しぶり。日本を堕落させる計画だけどまだ全然進んでないんだな。受験勉強とかあったし。」
男は言った。
「桂杏梨もいるのか。丁度いい。少し中に入れてくれないか?」
リサが言う。
「うーん、こんな奴家に入れるの気持ち悪いなあ。」
「大丈夫よ、パパの仕事仲間だよ?」
「じゃ、しょうがないか。」
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