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電子の絆(小説)19


外人部隊帰りの兄


元外人部隊の男が言った。

「俺がお前らの兄弟のタクトだ。」

アンリが言う。

「タクトさん。リサお姉ちゃんとどっちが強いの?」

タクトが鼻で笑う。

「ボクシング、レスリング、総合格闘技、どれも対個人戦での戦いだ。俺は飢餓の状態で歩き続ける訓練や、あらゆる拷問に耐える訓練なども積んでいる。人一人なんて銃があれば一瞬だ。」

「カチンとくるねえ。」

リサが言う。

「目潰し噛みつき金的無しでスパーやろうよ。」

「フッ・・・」

タクトが恥ずかしそうに言った。

「生まれて初めての肉親との邂逅なんだ。そんな野暮なことはよそう。」

「マチコお姉ちゃん、爆弾作りのプロは?」

アンリが聞く。

「家宅捜索受けて聴取受けてる。多分実刑だな。」

「ぎゃははははは!」

3人は大声で笑った。

「格闘技ジムを開きましょう。」

アンリが提案した。

「会員を増やしていってゆくゆくは洗脳してアタシ達の私設軍隊になってもらうのよ。」

タクトが言った。

「おい、リサ、マチコ、アンリは頭がおかしいのか?」

マチコは言う。

「ただのドキュンよ。」

リサは言う。

「タクトお兄ちゃんは上官に逆らったりしないでしょう?アンリはアタシ達の上官って訳よ。」

その夜はみんなでお酒を飲みながらタクトの逆立ち腕立て伏せを見て盛り上がった。


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電子の絆(小説)18


作戦会議


「元外人部隊に入ってたお兄ちゃんにも爆弾つくりのプロのお兄ちゃんにも連絡とってるみたいだから身の回りのことは安心して。」

マチコはそういった。

「外人部隊か、あなどれんな。」

リサが言う。

「じゃあ400億円を使って何をしましょう?」

アンリがウキウキと聞く。

「日本の景気が悪くなったらヤッコさんら儲かるらしいじゃん。じゃあ相当金もジャブジャブ使ってるはず。その逆を突く。」

「今から日本の株やらを買い漁っておいて株価を爆上げさせる。」

「そんなことが簡単にできるの?」

「リサさんがいれば不可能じゃない。」

リサが銃で撃たれた事件はそれなりに話題になったが容疑者の黒ずくめの男が完全黙秘を貫き殺人未遂で懲役を受け、話題もすこしずつ静まっていった。

「リサお姉ちゃん!CMオファーだって!」

「内容はホームセキュリティと滋養強壮剤とビールのCMか。いいな。」

「これでお姉ちゃん国民的スターだね。」

「マチコさん、あたしのことはどんどん利用してくれ。なんてったって中卒だからな。作戦なんて立てられないんだな。」

マチコは言った。

「ゆくゆくは選挙ね。」

「え!?」

「国会議員になってもらってマスコミで発言してもらう。それによって動く株価を前もって予想する。」

「最終的に例の組織に復讐したいんだけど。」

「お兄ちゃんお姉ちゃん達にはまだまだいっぱい異能者がいるから安心して。」

「電子の絆ね。」


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電子の絆(小説)17


新たな仲間


「パパ、例の組織にやられたわ。報復を考えてる。」

「報復?相当な力がいるぞ?」

「でしょうね。だからパパ、残りの兄弟の居所を教えて、その子らと一緒に目的を遂げる。」

「幼馴染のケンくんはいまだに入院してるらしいな。お前の気持ちはわかった。兄弟のなかでも特殊能力に長けたものを送ろう。」

「さすがパパー!」

数日後兄弟を名乗るものがリサの家に来た。白髪の混じったゴワゴワの長ロングヘア。スッピンにメガネ、GパンにGジャン。アンリが手を叩いて喜んだ。

「すごいすごい!これでバンダナしてたら最強ね。」

女は答えた。

「バンダナは今洗濯中だ。それとお前ら陽キャっぽいな。本当にアタシの兄弟か?」

「お姉ちゃんはオリンピック2種目制覇のアスリートよ!それが陽キャじゃなかったら誰が陽キャなのよ!?」

「リサさんじゃなくてあんたもだよ。いっとくけどあたし東工大出身よ?」

「アタシは東大の1年生でーす。」

「くっ!カーストとはこんなに不条理なものなのか!」

「東工大のお姉ちゃん、名前は何ですか?アタシはアンリ、このおねえちゃんはリサ。」

「アタシの名前はマチコ。」

「マチコ、あんたの才能は?」

リサが嬉しそうに聞く。

「資産運用。」

「ひょえー!」

アンリが絶叫する。

「今アタシたち二人の全資産は3億くらいだけどどう思う?」

マチコはこたえる。

「つつましく一生を送るなら十分な額だがヒリヒリした道を歩くには吹けば飛ぶような額だ。」

「だって。」

リサが笑う。アンリは少し怒って言う。

「じゃあ3億預けたらどこまで増やせるっていうのよ!」

マチコは笑う。

「私の資産は400億超えです。そんなはした金なんの足しにもならないからガリガリくんでも買って食べてれば?」

「お姉ちゃん、こいつ陰キャな上にヤな奴だ!懲らしめて!」

「懲らしめないよ。で、マチコさん、その400憶は私たちに協力するために使ってくれるっていうわけ?」

「リサ・ザ・クレイジークイーンのネームバリューと南国の某国とのスパイ活動なんて儲かる匂いがプンプンするじゃないですか!」

アンリは言った。

「マチコお姉ちゃんもジャンキーね。」


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電子の絆(小説)16


絶頂からの転落


黒づくめの男は3人に向けていきなり銃を放った。ケンとアンリはその一撃で戦闘不能になったがリサは違った。肩に銃創を負いながらも男を捕縛した。

「どういうことだ。」

「ボスが、死んだ。」

「で?なんでそれであんたがアタシらを撃つんだい?2人を病院連れてくんだから手短にな。」

「リサといったか、お前への抜群の知名度で日本の株価が徐々に回復しつつある。今お前が死ねば莫大な富が入る予定だった。」

一応アタシも殺人鬼じゃない。アンタは両手両足縛って警察よぶ。」

「アンリ!ケン!大丈夫か!?」

二人は意識を失っている。リサは応急手当をし、タクシーを呼び緊急病棟へ行った。

「アンリのやつ…こんな可能性は考えてなかったのか?国を亡ぼす?莫大な金を動かす?所詮命のやり取りのしたことのない頭でっかちの発想だ。」

「お...お姉ちゃん...」

「アンリ!喋るな!もうすぐ病院んだ!」

「アタシは死なないわ。ケンと二人でお姉ちゃんのTシャツ売った金が数千万ある。闇医者でもなんでも確実に治して。」

「わかった。」

タクシーの運転手は緊張からか一言も話さなかった。

3か月後、アンリは腎臓を失ったが命に別状はなかった。

「ほらぁ、腎臓って2つあるしぃ。」

ケンは肺を撃ち抜かれ未だに緊急病棟にいる。

「アンタの恋人、なかなか治らないね。」

「あいつは両親もいない状態から奨学金制度を利用して東大生になったほどの男だよ?これくらいで死ぬ玉じゃないって。」

軽口を叩くアンリの目には涙が光っていた。リサはそっと抱きしめた。

「奴らの組織はまた私たちを狙うはずだ。そうなる前に奴らの組織を潰す。」

「どうやって?」

「お父さんの子供、つまり私たちの兄弟と手を組む。」

「お姉ちゃん…」

「あんたとアタシ、2人組んでこの成功だ。全員揃ったらとんでもないことになるぞ。」


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電子の絆(小説)15


パーティー


「天下取ったー!」

リサは自宅でアンリとケンと一緒に宅配ピザを貪り食っている。

「うおおお!ビール美味い!おい!アンリは飲むな!まだ未成年だろ!」

Lサイズのピザを3枚頼んだ時はアンリもケンも驚いたが、もっと驚いたことにもうすぐ食べ切りそうだ。

「お姉ちゃんピザとかビールとかそんなに食べたかったの?」

「うん!アタシ70kg級で戦う為に60kgくらいまで増量してたんだよ。今回のオリンピックのために48kgまで減らしたの。ジャンクフードが食いたくて食いたくて。もう食っていいんでしょ?いやあマスコミになんて言うか考えないとな。」

「なるほどね。」

アンリが言う。

「お姉ちゃんはビッグマウスな上に節制もできないというわけね。」

「何言ってんだ。試合には間に合ったぞ?」

「いいのよ、普段は自堕落で試合の時だけ節制する方が人間味がある。」

アンリは理科1類、ケンは文科1類に合格した。リサもアンリ達と一緒に合格発表に来ていたが、サングラスをしていたのにすぐにバレ、揉みくちゃにされた。

「どうしてここにリサ選手がいるの?」

「いや、ほら、あの、アタシ中卒だからさ、東大の合格発表ってもんを見てみたかったんだよ。ほら、マスコミも来てるし。」

「リサ選手も大学受験するんですか?」

「いえ、しません。」

そう言うとリサは一人で車で帰ってしまった。

アンリは言った。

「受験勉強も終わったし、お姉ちゃんもオリンピック優勝したし、いよいよね。」

ケンが言う。

「何が?」

「決まってるじゃない!日本を支配するのよ!」

「え?」

「お姉ちゃんには日本の支配者になっていただきましょう。」

「お姉ちゃん車で帰っちゃったからアタシ達電車だったんだからね。」

「ごめんごめん、顔がバレちゃったからさ。でもさ、2年前の頃と比べて随分知名度上がったな、アタシも。」

「そりゃそうよ、オリンピック2種目金メダルだもんね。国民栄誉賞ものよ。」

「国民栄誉賞か。考えたこともなかったな。そっかー、大多数の人にとってオリンピックだけがスポーツなんだな。アタシが間違ってたわ。オリンピックよりもその前の70kg級の格闘技の方がしんどかった。」

「お姉ちゃんは中卒だから立身出世の方法はわからなくて当然よ。」

リサはアンリの背後に回って両腕でアンリの顔を覆い、手首の骨で思いっきりアンリの頬骨を締め上げた。

「んん~~~~~!!!!!!」

「アンリ〜、痛いだろう。この技は骨折したりとかの危険性はないが痛さではトップクラスだからなー。」

ケンが仲裁にはいる。

「あの、リサさん、今のはアンリが悪かったけど金メダリストが素人をいじめちゃまずいのでは?」

「大丈夫、ケンくん、これは姉妹喧嘩よ。あとね、スポーツにはオリンピック以外にも色々と、こういう恐ろしい技もあるんだってことを体で覚えてもらおうと思ってね。」

「なるほど、それもそうか」

「んん~~~~~~~~~!!!!!」

アンリは助けて離してと言おうとしていたがあまりの激痛に声が出なかった。

「…で。」

アンリは頬を氷で冷やしながら言った。

「おねえちゃん選挙に出てよ。」

「選挙?」

「出てくれなきゃ一般人に暴行したって週刊誌に言う。」

「ふざけんなよ。凄い手加減したし、あれは躾けだ。アタシが本気で締め上げたら頬骨陥没してるぞ。」

「このゴリラ女。」

「そのゴリラ女が選挙にでたらまずいだろ。」

インターホンが鳴った。

「誰だろう?」

モニターには黒い帽子にサングラス、黒いスーツ、黒ずくめの男が立っていた。

「誰だ?こいつ。」

「あー!知ってるわー。パパの元仕事仲間よ。あいててて。喋ると骨が痛い。」

マイク越しに男は言った。

「早乙女梨沙、仕事の依頼をしにきた。」

アンリが答えた。

「お久しぶり。日本を堕落させる計画だけどまだ全然進んでないんだな。受験勉強とかあったし。」

男は言った。

「桂杏梨もいるのか。丁度いい。少し中に入れてくれないか?」

リサが言う。

「うーん、こんな奴家に入れるの気持ち悪いなあ。」

「大丈夫よ、パパの仕事仲間だよ?」

「じゃ、しょうがないか。」


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電子の絆(小説)14


オリンピック


オリンピック。まずはボクシング。リサはもともと総合格闘技時代も立ち技で勝負するタイプだった。キックボクシングルールで戦ったこともある。そもそも70kgの相手にも勝てるリサだ。同階級の敵には圧倒的だった。ジャブで距離を取るようなことをせずにブンブン振り回す。リサの名前は海外でも少しずつ知られてきていて世界の人間が注目していた。順調に決勝戦。相手のボディにフルスイングした一撃でKO勝利した。

「アタシが同階級にいたことを恨みな」

リサは心の中でつぶやいた。

「お茶の間の皆さん、金メダルです。早乙女梨沙です。次はレスリングで金とるんで応援お願いします。」

「早乙女選手はこの後レスリングにも出場するんですよ。みなさん、絶対応援してくださいね。」

レポーターとのやりとりを聞いてアンリが苛立つ。

「ダメね。もっとビッグマウスよ。もっと大袈裟に、人を小馬鹿にしないと!」

すると突然リサがレポーターのマイクを奪った。

「いいか!このオリンピックの主役はアタシだ!アタシは戦うカリスマだ!アイム、リサ・ザ・クレイジークイーン!以上!」

リサがマイクをレポーターに返す。ケンがいう。

「これでレスリング、絶対負けられなくなったな。」

夏休みだったケンとアンリの2人はリサの元へ向かった。

「お前ら高校生のくせに金あるんだな。」

「お姉ちゃんがチケットくれないから自腹よ。いくらお父さんに貰ったって言っても所詮5000万よ。」

「アタシがアンタくらいの時は毎日訓練して月の給料10万くらいだったぞ。」

ケンが横から言う。

「ついこの間までは奨学金制度目当てに必死に勉強してたんですよ。高校入ってからもバイトと勉強両立してね。コイツは数少ない奇跡を手にして大金を得たんです。」

「そんなことよりお姉ちゃん、ボクシングの時のマイク、なかなか良かったわ。スポーツ新聞の見出しに、アタシは戦うカリスマだ、って一面で載ってたわよ。」

「お前に色々言えって言われてたこと思い出してさ。ついついオリンピックだと思うと優等生になっちゃうんだよな。ほら、周りがショービジネス格闘技やってる連中じゃないから真面目なんだよ。ついついペースが乱された。ボクシングもさ、ポイント稼ぐアマチュアボクシングばかりでさ、アタシの練習相手の男子プロに比べたら怖くなかったよ。」

「じゃあレスリングもいけるのね」

「わかんない。レスリングはほんと人気種目だからね。一瞬でも気を抜いたら負ける。」

「激戦区の日本代表になれたんだから大丈夫だよ。」

「うん。」

レスリングが始まった。アンリとケンは会場のチケットが手に入らず、会場近くのテレビの観れる飲食店を探して観戦した。リサ効果でレスリング会場は凄い興奮に包まれている。しかしそれは半分応援で、半分は調子に乗ってるやつが負けるところが見たいという心理、ビッグマウスの効果がモロに出ていた。この大会はリサが主人公だった。テレビのニュースのスポーツコーナーは連日リサの特集を組み、スポーツ新聞はリサに紙面をさく。専門雑誌でも毀誉褒貶あるものの格闘技を今後メジャースポーツにするためには、リサのような、かつてのモハメドアリのようなズバ抜けた存在が必要だ、などと口泡とばしてがなりたてていた。

試合はトントン拍子に進んだ。リサが劣勢になることがないのだ。常に攻め続け、時間になると大差でポイント勝ちしてる。「お姉ちゃん、勝てるかな?」

アンリが言う。

「らしくないな、アンリ。お前はいつも自信過剰でこの程度のことじゃ何とも思わないもんだと思ってたよ。」

ケンがいう。

「だって実の姉があんな世界から選ばれた屈強な人たちと戦ってるんだよ?怪我でもしないかと心配で。」

アンリの心配をよそにリサは決勝戦も大差をつけて勝った。

日本のテレビ局が群がる。リサが答える。

「この大会はアタシのためのものだって言ったろ?この先どうするかって?とりあえず、笑っていいともに出るのが小さい頃からの夢だったけど終わっちゃったから、徹子の部屋に出たいね。」アンリのいる店では非難するもの、賛辞をおくるもの半々だ。

「半々でいい。」

このままマスコミに追いかけ回されても消耗しないだけの実績は作った。

「アタシが頑張る番ね。」

アンリはビールをジョッキで飲んだ。


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電子の絆(小説)13


ビッグマウス


「いい?お姉ちゃん。ビッグマウスよ。不言実行なスポーツ選手なんてゴマンといるわ。あえて有言実行。」

「アンリ、日本を没落させてどうのこうのってのはどうなったんだ?」

ひさびさのリサの休日、リサの家でケンとアンリの3人でお茶を飲んでいる。

「そう言われると思ってね、パワーポイントで資料を作ったの。今から説明するわね。」

「その1、内乱を起こします。」

「待てまて、どういうことだ?」

ケンが思わず身を乗り出す。

「だからー、アタシがお姉ちゃんを利用して国家転覆させようと思ったらその際にアタシたちを守る暴力機関が必要でしょ?募るのよ、最強の女の子を守る親衛隊を。武器を持ったら捕まっちゃうからあくまで素手で強い軍隊を作って。」

リサはニヤニヤ聞いている。途方もなさすぎて自分と関係ないと思っているのだ。ケンはあたふたと落ち着かない様子だ。

「その2、内乱のドサクサで臨時政府を作ります。こうなったら諸外国もなんらかのリアクションをとるでしょう。あとは日本もろとも自滅してもらいます。アタシの依頼主が満足するくらい、徹底的に没落してもらいます。お姉ちゃんは危険を感じたらいつでも逃げてください。」

リサが言う。

「お前孤児院と南の島が欲しいんだっけ?いいのか?そこまでスケールのでかい仕事の報酬がその程度で。」

「そう言われてみるとそうね。依頼を受けた時はお姉ちゃんの存在を知らなかったから計画を練る発想も浮かばなかったから言われるがままに受けたけど、これって下手したら億じゃなくて兆の金が動く案件だよね。」

ケンがやじる。

「お前は歴史の授業捨ててるからそんな怖いことが思いつくんだ。」

「何よ!」

「いつの時代も権力というものはその力とともに毒も持っている。うっかり手を出したら毒に触れて死ぬぞ。」

「何よ、ビビってるの?」

「リサさんを利用するのも反対だしお前が権力を持とうとしてるのはもっと反対だ。」

「なんでよ!」

リサがナッツを食べながら言った。

「ケンくんもアンリが好きなんだよ。好きな女が危険なことしてるのが嫌なんだよ。あんたら両思いなんだよ。よかったね、アンリ。」

ケンが焦る。

「いや、あの、はい、まぁ。」

「ケンは昔からそうだよね。アタシが鉄棒で大車輪やっても褒めないで危ないからやめろって騒いでさ。いいじゃない、アタシが危ないことだろうが面白いと思ったことは最後までやっちゃうんだってのは知ってるでしょ?」

「わかってるよ。お前のことは。昔からそうだった。でも俺が最終ラインで止めてたから助かってきたんだぞ?」

「なるほどね。」

リサが口を開く。

「アンリが暴走する、ケンくんがセーブする。お互い譲り合って釣り合いのとれたことをする。そういう理屈で2人は回ってるわけか。さすが幼馴染、上手くできてるね。」

アンリが言う。

「ケンには意気地が無いの。」

ケンがいう。

「アンリには自制心がないんだよ。」

リサがまとめる。

「ふむ、お姉ちゃんとしてはね、アンリが思ってるより単純に考えてるんだな。計画が本当に正しければ全く不満はないのだよ。アタシはね、決められた法則に則って体と心を鍛えて敵を倒す訓練をずっとしてるわけで、法則自体を疑うのはまた違う人の仕事なのだ。」

リサの背中のタトゥーをデザインしたTシャツがちょっとしたブームになっていた。アンリは依頼主も出し抜いて自分の周りだけに利益を産ませる方法を考えていた。もうすぐリサの出場するオリンピックが始まる。


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パパパパパパ活01



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電子の絆(小説)12


リサ・ザ・クレイジークイーン


リサのパンチの連打が敵を襲う。1R40秒でレフェリーが止めた。異例のボクシングデビュー戦が同階級国内チャンピオンというこの試合。リサはオリンピックボクシング日本代表の切符を手に入れた。

「次はレスリングだね。お姉ちゃん。」

「日本は女子レスリング強いからな。気合い入れていくぞ!」

この時点ではマスコミも半分疑問だった。1人の選手が全く違う競技でオリンピック代表になった例は少ない。いくらお互い格闘技というカテゴリーに入っているといっても、将棋の達人がチェスの世界大会では負けてしまうようなもので、同じ種目に割ける時間が圧倒的に違うのだ。

レスリングオリンピック代表選考大会、リサの動向はもはや国内中から注目されており、同一選手によるボクシングレスリングへのオリンピック出場決定の瞬間を見ようと競技場には人が押し寄せた。急遽レスリング協会は競技の観戦を有料にして緩和に努めた。テレビ放送のスポンサーもつき、異例の全国放送が決まった。

競技会での主役はやはりリサだった。

テレビの解説席にゲストとして女子総合格闘家の選手が来ている。

「早乙女梨沙選手がプロ格闘家の道を卒業してしまったのは非常に残念ですね。まだまだ発展途上のジャンルですしね。ですがオリンピック代表、しかも2種目同時となればね、これはもう、国民全員が注目しますよ。女の子でも戦いたいと思ってる全国の少女の道しるべになるでしょうね。」

試合は16人がトーナメント形式で戦う。リサが戦うことに反対するものもいた。女子レスリングは日本のお家芸。最近レスリングの練習始めたばかりのリサにその資格はあるのかという疑問の声もあった。その手の目線をリサは一回戦で豪快に吹き飛ばした。

「強い!早乙女選手!強い!リサ・ザ・クレイジークイーン!去年の日本選手権を制覇した古泉選手に何もさせずに大差で勝利!これはどう見ますか?」

「ええ、やはり早乙女選手はプロ時代70kg級の選手と真っ向勝負できるだけのパワーがありましたし、軽量級特有のスピードとスタミナも持っています。レスリング協会は一回戦で負けさせてこの騒ぎを鎮めようと思って古泉選手と戦わせたのでしょうけど、はっきり言って、早乙女選手は金メダル候補ですね。」

結局どの相手もリサからほぼポイントを取れず、圧倒的な差をつけてリサは優勝した。

「早乙女選手、ボクシングに続きレスリングオリンピック代表決定おめでとうございます。」

「ありがとうございます。ひとつ、いいですか?」

リサはマイクを受け取った。

「テレビの前のみんな、応援ありがとう。アタシが早乙女梨沙です。今度のオリンピックはアタシが面白くするんでよろしくね。最後に一言。」

リサは大声で言い放った。

「アタシがクレイジークイーン、リサだー!」

「ありがとうございました。それでは早乙女梨沙選手にもう一度大きな拍手を。」


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電子の絆(小説)11


天才少女


1学期の期末テスト、ケンは学年1番を取った。アンリは理数系はほぼ満点だったが古文と漢文を捨てている。社会の暗記系もほぼ取れなかった。

「なんで日本には飛び級が無いのよ。アタシは高等数学だって解けるのにー。」

アンリはケンに勉強で負けたことが本当に悔しいようだ。

「だってアンリは継続力がないだもん。毎日予習復習してればいいのに、ほとんどパソコンで遊んでるじゃん。」

「遊んでるじゃないわよ!世界中の人とボイスチャットして言語を学んでいるの。」

「ほう。」

ケンはアンリに貰った大金でスマホの契約をしてからスマホに夢中だ。アンリの言葉も上の空。

「そうやって携帯電話いじってばかりいると電子の絆踏んで精の魂まで搾り取られるわよ。」

2人はリサに電話した。

「お姉ちゃん?アタシ達、夏休みになったよー。アタシは数学と化学と英語が1位だった。ケンは総合で1位だった。」

「お勉強頑張っているようでよろしい。お姉ちゃんは今減量とトレーニングで頭おかしくなりそうだよ。」

アンリが会いたいと言うとリサは車で迎えに来てくれるといった。

「お姉ちゃん、勝てそう?」

「んー、ボクシング初めてだからねぇ。相手はボクシング専門で何年もやってる人だし。アタシに勝ったら名前も売れるし美味しい相手だと思われてるんじゃない?」

「お姉ちゃん悪者?」

「そりゃあんだけマスコミで騒いだからね。黙々と頑張るだけですって言ってる優等生の方が応援されるんじゃない?」

リサのトレーニング施設に着いた。

「ケンくんはスマホ買ったのか。ライン交換する?」

「はい、お願いします。」

アンリが首を突っ込む。

「言っとくけどね、お姉ちゃん、ケンに手ぇ出したらブつからね。」

「手も出さないし、お前に殴られてどうにかなるようなヤワな鍛え方してないよ。」

「なら良いんだけど。」

リサのトレーニングは男性ボクサーとのスパーリングをほぼ休みなく行うというものだった。男性の方は1Rごとに交代して常にベストの状態で臨む。リサは毎ラウンド全力で戦う男性のボクサー相手に戦っていた。だが、リサは常に試合の主導権を握り、時にダウンを奪っていた。

「お姉ちゃん凄いじゃない!これなら自分と同じ体重の女子なら世界一になれるよ!」

リサはゼエゼエ言いながら答えた。

「万に一つも負けるわけにいかない。」

一通りボクシングの練習が終わるとレスリングの練習が始まった。少し前までレスリングのルールすら知らなかったリサだが、今では体重で勝る男子選手相手に互角以上に戦っている。

「凄いね。お姉ちゃん。」

「万に一つも…」

リサは気を失った。


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電子の絆(小説)10


ツンツン少女


リサの高級車に乗ってアンリとケンは2人の父親に会いに行った。

「お父さん教祖だったんだ。」

「なんかもう死にかけてるけどね。パパ。」

老婆がドアを開けた。

「貴女の娘のリサです。手紙をくれましたよね。」

「おお、リサかい。貴女はたしか早乙女さんとこの子だね。」

「随分性に奔放な家庭なんですね。」ケンが恐る恐る言った。

「じゃあ貴女の旦那さんの娘です。逢いに来ました。」

リサは父親に会うと泣き出した。

「お父さん。」

「梨沙か、相当頑張ってるようだな。」

リサは手で顔を覆って泣きじゃくっている。アンリが言う。

「普段は化け物みたいに強いのにこういうのには弱いのね。」

「杏梨をどう思う?梨沙。」

リサとアンリの父親がベッドに横たわりながら聞いた。リサは泣き終えた後答えた。

「アタシは相手を弱そうか強そうかでしか判断できないけど、いいの?」

「かまわんよ。」

「今はまだ、弱い。でも強くなりそうな予感がある。」

「どのくらい強く?」

「それはわからないけど、アタシは毎日1人の人間を倒す練習ばかりしてるけど、アンリはもっと大勢を相手に勝負したいんだと思う。その為にボディガードするんだと思ってるけど、どうも話がボディガードからそれて変な方向に向かってるの。」

「ふむ。」

2人の父親は話を聞いて続けた。

「アンリ、お前リサをカリスマにして利用しようと思ってるのか?」

「そうよ。お姉ちゃんがメディアにバンバン出て大衆を扇動するの。」

「ふむ。だがそうなると俺や俺の教団やアンリ、それらの存在に気づくものも現れるだろう。そうすればどうする?」

「パパをメディアに進出させるわ。」

「アンリ、お前一体何を考えている…。」

「利用できるものは全て利用させてもらう。」

「アンリ、お前はなんという子に育ったんだ。まるで若い時の俺を見るようだよ。そうだ。世界を手にしたかった。あの頃の俺は狂っていた。懐かしいよ。アンリ、狂人にしか世界は動かせない。お前なら大丈夫だ。俺のことも教団のことも自由にしてくれ。」

帰りの車中リサがアンリに聞いた。

「アンタとお父さんってどういう関係なわけ?異常だよ。」

「戦友みたいなもんよ。」

ケンが突っ込む。

「テキトーなこと言ってんじゃねえよ。」

「じゃあお姉ちゃん、明日から学校だからアタシとケンはこれで。練習頑張ってね。」

「ボクシングとレスリングならいままでやってた練習も無駄にならないし少しアレンジが変わる程度だよ。」

「あとさ。」

アンリが言う。

「パパに会って何であんな泣いてたの?」

ケンが言う。

「あれが普通の反応だ。実の親に何十年ぶりに会ったら誰だって泣くから。」

リサが言う。

「いやぁ、恥ずかしいところ見せちゃったな。このことはマスコミに言うなよ?クレイジークイーンって呼ばれてるアタシが親と再開してボロ泣きとかダサすぎるから。」

「さっそくお姉ちゃんの弱みが一つ握れたわ。」

「お前は悪魔か。」

ケンが言う。

「じゃあリサさん、俺とアンリは受験勉強とかあるんでこの辺で。」

「いい大学入れるといいね。」

「ありがとう。」

アンリは笑顔で答えた。


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電子の絆(小説)09


モハメドなんとか


リサは2年後のオリンピックのレスリング日本代表及びボクシング日本代表を目指す事をマスコミに伝えた。アンリはリサにこう伝えてあった。傲慢であること。既得権益をもつものを挑発すること。大げさに、観てるものが皆眼を見張るように振る舞うこと。リサは見事に演じた。

「アタシが総合格闘技5階級制覇した無敗の女王早乙女梨沙だ。2年後には世界初のレスリングとボクシング、両方のオリンピック金メダルを同時にとる女になる。」

総合格闘技時代の控え目な立ち居振る舞いとのギャップに世間は驚いた。週刊誌は面白おかしく記事にしていき、地上波テレビでも多少批判的な目で見られつつも注目されていった。リサが48kg級の体で70kg級の選手を倒すシーンは何度もお茶の間に流れ、一般層への知名度も上がっていった。

「ビッグマウスな選手になりたくなかったんだけどなぁ。」

リサは心底嫌そうにしている。

「だってお姉ちゃんって、凄いことしてるのにアタシもケンも知らないくらいの知名度しかなかったじゃん。なんとかかんとかアリってボクサーもビッグマウスだったんじゃないの?」

アンリがテキトウなことを言っている。

「モハメドアリな!アリの名前も知らないのに格闘家をプロデュースする気なのかよ。あのな、ビッグマウスってのはな、注目と同時に悪意も集まるんだぞ。一回負けたら人格まで全否定されて笑い物だ。」

「有言実行って言葉があるのよ。リスキーな分リターンも大きい。お姉ちゃんは日本の若者達の憧れになってもらいたいの。影響力を持って欲しい。その上でその人たちをアタシの手のひらで操るの。」

少し考えてリサは言った。

「アタシ本は読まないけど戦争の歴史くらいは知ってる。アンリ、お前は途方も無い空想家か有能な指導者のどちらかのようなことを言っている。そして民衆はそういうやつに弱い。ブレーキの壊れたアンリのようなやつが描いた脚本通りに演じてみるのも面白いな。」

ケンが言う。

「この国に恨みでもあるのか?」

「ないわ。」

キッパリとアンリが言う。

「お姉ちゃんを英雄にして影響力を持たせる。その後のことはその時考える。」

「リサさん、こいつは金が目当てなんだ。金のためなら自分の国まで売り飛ばすっておかしいんじゃないですか?」

「あら、ケンくんもアンリと一緒に育った孤児でしょ?不思議だね。お金がそんなに嫌い?自分が貧乏なままで自分の国が好景気なら満足なの?」

「そ、それは…。」

「ケンはね、非常に模範的な一般人なんだよ。」

アンリが言う。

「1番最初に水に飛び込む仲間が現れるまで水に飛び込めないでいる群れの中の一匹のペンギン。」

アンリは続ける。

「人はみんな違うんだ。違った上で理解していくことが大事。」

アンリとケンは先日手に入れたお金全てとリサの貯金を合わせてリサのグッズを販売することにした。

「ロゴなんだよなー。」

アンリが頭を抱える。

「インパクトがあって安っぽく無いロゴ。なにかないかなー。」

ケンが言いづらそうに言う。

「あのさ、リサさんのタトゥー、原子力のマーク、やっぱりみんなあれに目が行くと思うんだよね。」

「うーん。」

アンリが言う。

「お寺の地図記号にして一瞬ナチスに勘違いされるっていうのはどうだろう。」

「却下。」


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電子の絆(小説)08


奇妙な団欒


ケンとアンリ、リサの3人は、ゲームセンターでダーツをしていた。リサは一応顔が割れないようにサングラスとマスクをしている。

「日本人から労働意欲を奪って日本の価値を下げてそれを利用して市場で儲ける?なんだかややこしい話だね。」

リサはダーツの腕の方も確かなようで、2人に大差をつけて勝ちながらそう呟いた。

「お姉ちゃんは愛国者?」

「へ?」

「だって自衛隊入ったり今もオリンピックの日本代表目指してるんだし、日本が没落するのは嫌?」

「まぁ、簡単には言えないけど。孤児だったアタシが人並み以上の生活をする為には戦い続けるしかなかっただけだし。自衛隊入ってたのも国を守るためってより自分の守り方を身につけるためだった。」

ケンが口を挟む。

「リサさん、こいつはね、金に目が眩んでるんですよ。他国のスパイだった親父の真似して大金を得たいだけなんですよ。こんな奴の言う通りにしてたらリサさんの人生がメチャクチャになりますよ。」

「ケンくん、だっけ?あんたアンリの恋人?」

「えっ?いや、ただの幼馴染です。」

ケンは躊躇いながら言った。

「あんたねー!女子高生に愛の告白されて幼馴染のまんまでいようってわけ!?相変わらずウジウジしたやつ!」

アンリが大声をだす。

「ああ、中々いい関係なのね。」

リサは2人の初々しさを微笑ましく見ている。

「家族がいたんだね。アタシ達にも。」

リサが住むマンションはリビングだけで20畳はありそうだ。

「お姉ちゃん結構稼いでるんだね。」

「最近は女子総合格闘技バブル期でさ、大会に勝つたびに大金が貰える。しかもアタシ中々可愛いからモデルみたいに雑誌の表紙にも載るし、あんたら2人がアタシの事知らないのが逆に新鮮でいいわ。」

「ルックスがいいところは私もそうだから気持ちがわかるわ。好みの男だけでいいってのに、どうでもいい男まで群がってきてたまに面倒くさいよね。」

「アンリはアタシと違って性格が悪いな。」

「俺もそう思います。」

ケンがそう言うとアンリは口を尖らせた。

「妹のためなら世界一有名なアスリートになってやってもいいよ。一人ぼっちの孤児で喧嘩ばっかりして、自衛隊入って、訓練して、もっと金になる事は出来ないかと思ってプロ格闘技始めて、勝ち続けて、敵がいなくなって、次何しようかなって時だったから。アンタラみたいな素人目線で次はオリンピック金メダル目指せとか言われると逆に新鮮だわ。」

「えー?スポーツやってたら普通オリンピック金メダル目指すんじゃないの?」

「男子オリンピックなら昔から格闘技もあったんだけど女子にはなかったんだなこれが。」

「じゃあチャンスだね。」

「え?」

「女子の格闘技がオリンピックで採用されて間もないんでしょ?じゃあボクシング?とかレスリング?とか柔道?とか、他になんかあるのかな?まあ、全部制覇してしまおう!」

ケンが呆れる。

「俺でもわかるぞ、そんなに甘い世界じゃないだろ普通。」

「いや、ケンくん、そうとも言えない。さっき話したようにレスリングは行けそうだ。よく考えたらボクシングも選手人口も少ないし歴史も浅い。その他の競技も専門性の低いものならねじ伏せられるかもしれない。」

「それはそうとお姉ちゃん相当不味そうなモン食うよね。」

「お前プロテインも知らないのか?タンパク質をとるためのパウダーで、スポーツ界では常識だぞ?まあアタシが格闘技マニアなのは自覚してるけど一般人はホント格闘技興味ないんだな。」

「お姉ちゃんはDVDのコピーしてウハウハ言ってるチンパンなんだからそれでいいのよ。アタシはテクノロジーの申し子なの。きっとお母さんは違うんでしょうね。」

「おいケンくん、アンリはなんでこんなに口が悪いんだ?」

「何言っても殴られないと思ってるからじゃないですか?」

「なるほど。」

その瞬間、リサはアンリに飛びかかった。

「許してー!お姉ちゃんー!」

リサは関節が壊れるギリギリのところまでアンリの足首をひねっている。

「これ痛いんだよなー。」

リサは満面の笑みで技を続ける。

「痛いー!痛いー!痛いー!」

ケンは思った。姉妹で喧嘩か、羨ましいな。


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電子の絆(小説)

電子の絆(小説)07


最強の姉


「頑張ってー!お姉ちゃーん!」

アンリとケンはリサが出場する格闘技の大会の観戦に来ていた。ケンが言う。

「国を売るのと格闘技観戦に何の関係があるんだ?」

「私もわかんないけどいつの時代もスポーツのスターはマスコミにも出てるわけでしょ?ならお姉ちゃんがマスコミに何言うかも私たちが裏で決められるってことでしょ。」

試合は一方的だった。リサは圧倒的に体格の大きな相手に馬乗りになって顔面を殴り続けている。審判が試合を止めた。どうやらリサはこの試合に勝ったことで体重別の階級5つを制覇したらしい。

「お前の姉ちゃん有名人なのな。」

「いや、女子がこんな野蛮なことしていいの?」

ケンとアンリは圧倒されていた。試合後リサがマイクを持った。

「48kg級のアタシが70kg級の王者になれたことを非常に誇りに思います。」

「今後はどういった方向に進むつもりですか?」

インタビュアーが聞く。

「70kg以下ならどんなルールでもいいので挑戦してきてください。どこまで防衛できるかわかりませんが、ギャラもそんなに望まないし、とにかく戦い続けたいです。」

リサの試合はテレビのゴールデンタイムで流れることもあり、女子アスリートとしては抜群の知名度があった。

「これよ!」

アンリが叫んだ。

「お姉ちゃんにスターになってもらって、いや、もうある程度スターなんでしょ?ならそれを観てる人達に何らかの影響を与えられる。」

「格闘家が世の中に影響与えられるのか?」

ケンがつっこむ。

「アタシも詳しくないけど昔アリっていうボクサーが反戦運動して成功したらしいわよ。」

「らしいばっかだなお前。」

「だから詳しくないんだってば。そこら辺のことは今夜お姉ちゃんに聞こう。」

ーーー夜がふけた。

「アリみたいに政治的発言しろってか?」

リサが笑った。

「そうねえ…、女子の格闘技の最高峰を目指していけばなんとかなるかもね。」

「最高峰ってどの種目?」

アンリとケンがリサに尋ねる。

「ズバリ、柔道。女子の競技人口の多さとオリンピックに採用された歴史が長い。」

「お姉ちゃんオリンピックの柔道で金メダルとってマスコミに発言できる?」

「正直アタシは柔道経験はない。だけど総合格闘技という打撃も投げ技も関節技も許された競技では無敗だ。柔道に専念すると言ったらマスコミも注目するかもしれない。」

「どっちなの?金メダル取れるの?取れないの?」

「ぶっちゃけ絶対取れないと思う。あいつら着衣だとバケモノだ。服掴んでいいルールなら絶対勝てない。」

「ええー、そんなぁ。」

「だけど、次に有名なのが女子レスリングだ。これならアタシがやってる総合格闘技とかなり相性がいい。48kgの階級なら付け焼き刃でもオリンピック狙えるかもしれない。」

アンリの目が輝いた。

「スパイってね、何も、重要機密書類を探し出すことが仕事なわけじゃないんだって。そこらの週刊誌やらテレビなんかから得られる情報から本質を類推することが仕事なんだよ。」

「アタシがテレビで発言していくことで株価なんかを操作できるってわけ?」

「お姉ちゃんアスリートだけあって勘がいいね。日本国民を徐々に洗脳していく感じね。」

「まるで宗教だな。」

「知らないの?パパは教祖よ。」

手紙でアンリのボディガードを頼まれただけのリサは酷く驚いて聞いた。

「アンリ、お前何をしようとしてるの?」

「まずはね、羨ましがらせるのよ。アタシ達を真似したくなるように。そこまで持っていけばいい。あとはその時考える。」

リサは呟いた。

「アタシが最強目指してる間に民衆を支配しようとしてた妹がいたとはね。」


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電子の絆(小説)06


鍵は3つ


「電子の絆はセックスを武器にしてるわけじゃん。」

アンリが帰りのファーストクラスの中でケンに言った。

「お前、女子高生がそういうハシタナイこと言うな。」

「でさ、他に武器になるものってなにがあるかな?」

「うーん、たしか世界大戦のあったころに支配者層が考えてたらしいな、そういうこと。シネマ、スポーツ、セックス、だったか。」

「なにそれ?」

「人を洗脳する一番早い方法がその3つだって。まあようは娯楽だな。」

「ケンは具体性に欠けるんだよ。」

アンリはシャンパンをラッパ飲みしている。

空港につくとピアスまみれの女が声をかけてきた。

「お前桂杏里か?」

「あんた誰?」

アンリがムッとしていると女は笑った。

「お前のお姉ちゃんだよ。年はお前の5つ上だ。いきなり死んだはずの父親から連絡があってお前のボディガードを頼まれた。」

「ボディーガード?お姉ちゃんなの?」

「中卒で自衛隊入って色々銃器ぶっ放してるし、護身術の類ならそこらの大男にも負けない。」

「自衛隊ってピアスOKなの?」

「今は格闘技っていうの?あれの一応プロやって飯食ってる。ピアスは試合の時は外すけど試合以外ではつけてる。アピールポイントなの。」

「格闘技?えっ!?ケン!さっき言ってた支配者層が民衆を洗脳しようとするときに利用した3つってセックスとシネマとスポーツだよね。スポーツをどう利用するの?」

ケンは動揺してまごまごしている。アンリの姉は続けた。

「あんたもアタシと同じで頭ぶっ飛んでるね。アンリ、アタシの名前はリサ。ボディガードの枠を超えて協力してもいいよ。」

「ひとまず。」

アンリはリサに詰め寄った。

「ロゴよ。」

「ロゴ?」

ケンとリサが不思議そうに聞いている。

「アタシの戦いにふさわしいロゴマーク、いいのないかな。だってどこの団体だってその団体を代表するロゴマークがあるでしょ?ブランドってことよ。」

リサが言った。

「アタシ、背中に核エネルギーのマークのタトゥーしてるよ?」

「姉ちゃん頭おかしいな。」

アンリはゲラゲラ笑った。


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電子の絆(小説)05


黒幕との邂逅


厳重なチェックをいくつも通り、3人はある部屋に着いた。

「連れてきたぞ。カツラの後継者だ。」

男は言った。 白髪の老人がゆっくりと日本語で話す。

「カツラか、懐かしいな、やつの力で我が国は莫大な富を得た。」

老人は続けた。

「しかしやつは例えるなら猛獣だ。猟犬としては使いこなせなかったのだ。」

老人は葉巻に火をつけなおも続けた。

「お前はどっちだ。我々に忠誠を尽くせるか?」

アンリは力強く言った。

「お金が欲しいの。孤児院を作って子供たちに生きる力を学ばせたい。南の島のリゾート地も欲しいわ。」

はっはっは。老人は笑った。

「金ならいくらでもある。今君のパソコンに入っているカツラの作ったアプリケーション、即金で買おう。」

「任務は何?」

アンリがあまりに堂々とあやしげな連中と交渉してるのをケンは恐々見守っていた。

「大まかにいうと、日本人の労働意欲を奪ってほしい。日本を経済的に没落させることで資金を運用する予定だ。」

老人は煙をくゆらせ、そう応えた。

「日本を売れってことね。」

アンリはキッパリという。ケンが口を挟んだ。

「国を売る?女子高生が?」

アンリの口調がなにか壮大なものを感じさせるものになる。

「取引成立ね。日本人の労働意欲を奪えば孤児院と南の島。なんのプランもないけれどなんとかしてみる。」


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電子の絆(小説)04


初恋


某国、孤島。

ケンがぼやく。

「ったく俺をどこまで振り回すつもりだよ。2500万円くれた後に学校とバイト休ませて、訳わかんねー島に連れてきて。」

「2500万円の中には口止め料金と拘束料金が入ってまーす。」

アンリが意地悪く言う。

黒ずくめの男は片言の日本語で話した。

「カツラアンリ、お前の父親から聞いた。お前の父親は優秀なスパイだった。我が国に大きく貢献した。そのお前の父親が認めた後継者がお前だ。」

「アンタ、パパの知り合い?」

アンリは目を輝かせた。

「戦友とでも言おうか。私も諜報活動を行っていた。お前の父親は日本のあらゆる機密を我が国に流してくれた。私はお前の父親を尊敬している。」

「でも、2重スパイだったんでしょ?」

アンリは男に言った。

「我が国の情報も日本に漏れていた。だが、優秀な人材をその程度のことで抹殺するより、次世代の人材を生む種になってもらうことを選んだ。」

男は続けた。

「スパイとしての野生の勘。遺伝子。それが宿った子供を作り、我が国に届けることを条件にお前の父親を生かした。結局宗教団体の教祖になり、信者たちに数十人の子供を孕ませたらしい。」

「数十人の子供を…、孕ませた…?」

アンリが繰り返す。ケンが叫んだ。

「頭大丈夫かよお前!?種?孕ませる?孤児として育ったこいつの気持ちになってみろよ!」

「いいのよ、ケン。」

アンリはなだめるように言った。

「空想の中のパパはいつだって神様だったわ。でも本当のパパがただの人間でも、神様になることを目指したような人だってんなら話は別。」

男が口を開く。

「今の話を聞いても我が国に協力できるのだな?」

アンリはケンの腕を引っ張って応えた。

「この人はアタシの初恋でイマも好きな人。この人と二人で楽園に住めるくらいの報酬を用意して。」

ケンが真っ赤になる。

(俺もお前が初恋で今も片思いだと思ってたよ)

「でもっ!でもコイツラ絶対頭おかしいぞ!アンリ!お前イカレタ集団の仲間入りすんのかよ?」

ケンは自分の動揺を隠そうと必要以上に常識的な意見を言った。

「2重スパイの成れの果てが一瞬で5000万円作り出す財力。その本家のやつらがどれだけのものか見てみたくない?」

アンリはそう言うがケンは呆れてさっきの愛の告白のことも忘れそうになっていた。


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電子の絆(小説)03


2重スパイの成れの果て


「パパ、今までのアタシの養育費として5000万円振り込んで。パパのスパイしてた国に飛んだりするから。」

アンリは父親に通信を送った。

「お前なあ、そんなもんでいいのか?じゃあ今からいう仮想通貨を買え。俺が後で値を上げてやるから。」

横にいるケンは自給980円のバイトをしている自分と目の前の会話との落差に気が遠くなった。

「わかった。全財産ぶち込む。」

アンリは言った。

「ケン、アンタにも半分あげる。口止め料よ。」

アンリが仮想通貨を15万円分買ったことを父親に伝えるとチャートに異常が起こった。みるみる値が上がっていく。

「おいおいお前の父ちゃんいくら金持ってんだよ。」

ケンはさっきからタバコを持つ手が震えている。

「これで、5000万。」

アンリは決済した。

「20倍の倍率で取引してたから楽勝だったわ。」

アンリは勝ち誇りながらケンのタバコに火をつけ思い切りむせた。

「2500万円ずつか、何に使う?」

ケンが聞いた。

「アタシの野望を聞きたい?」

アンリが怪しげな目で言った。

「アタシは将来孤児院を作りたいの。」

意外とまともだなとケンが思っているとアンリは続けた。

「全ての子供にアタシのハッキング技術を伝えて世界一のハッカー集団にするのよ!」

2人は空港へ向かった。

「一週間もバイトと学校休みにしちゃったよ。大丈夫かな?」

ケンがいうと、

「あんた、もう奨学金も生活費も心配しなくていい額の金もってるんだよ?」

アンリがニヤニヤしている。

「カツラアンリさんですね」

黒ずくめの男が空港で声をかけてきた。

「あんた誰?」

アンリが警戒する。

「アナタの父親からメールがきました。是非我が国にお越しください。」

男は微妙な発音の日本語で言った。

「我々の国は電子機器の操作に習熟したアナタを迎え入れます。」

「パパみたいにスパイになれってこと?」

「そうです。」

ケンが青ざめた。

「スパイってお前冗談じゃねえよ!コイツはまだ16歳の普通の女の子だぞ?」

そんなケンとは正反対の表情でアンリは言った。

「報酬しだいね。」


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